「最近いびきがひどいと言われた」「日中に強烈な眠気が来る」「朝起きると頭が痛い」――これらは睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的なサインです。SASは単なる「いびきの問題」ではなく、放置すると高血圧・心筋梗塞・脳梗塞のリスクを大幅に高める深刻な病気です。この記事では原因・症状・タイプの違い・検査・治療法・日常でできる対策まで、睡眠カウンセラーがわかりやすく解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が10秒以上停止する「無呼吸」が1時間に5回以上繰り返される状態を指します(正式名称:Sleep Apnea Syndrome / SAS)。日本の成人で中等症以上のSASを持つ患者は900万人以上と推定されており、そのほとんどが未診断・未治療のまま過ごしているとされています。無呼吸のたびに脳が覚醒して呼吸を再開しますが、本人がその覚醒を自覚していないことが多く「ちゃんと寝たはずなのに疲れが取れない」という状態が続きます。
3つのタイプと特徴
| タイプ | 原因 | 割合 |
|---|---|---|
| 閉塞型(OSA) | のどの軟部組織が閉塞し空気の通り道が塞がれる | 最多(約9割) |
| 中枢型(CSA) | 脳の呼吸中枢が正常な呼吸指令を出せなくなる | 少ない |
| 混合型 | 閉塞型と中枢型の両方の原因が混在する | 少ない |
日常生活で問題になるのはほとんどが閉塞型です。以下では閉塞型を中心に解説します。
主な原因・リスク要因
①肥満・首周りの脂肪
最も多い原因が肥満です。首周りや舌に脂肪がつくことで睡眠中に気道が狭くなります。BMI25以上・首周り40cm超は特に注意が必要です。
②顎の形(小顎・後退顎)
顎が小さい・後退している場合、舌の根本(舌根)が落ち込みやすく気道を塞ぎやすいです。痩せていてもSASになる方の多くがこのタイプです。整体師の視点からも、首の前弯が強い方(ストレートネック)は舌根沈下が起きやすい傾向があります。
③扁桃・アデノイドの肥大
特に子どもに多いタイプです。扁桃腺やアデノイドが大きいために気道が物理的に狭くなります。
④飲酒・睡眠薬の使用
アルコールや睡眠薬は筋肉を弛緩させます。のどの筋肉も緩むため、気道が閉塞しやすくなります。「お酒を飲んだ夜はいびきがひどい」という方はSASのリスクがあります。
⑤加齢・ホルモン変化
加齢により筋肉が衰えると舌根が落ちやすくなります。また閉経後の女性はエストロゲン・プロゲステロンの減少により気道の筋肉トーンが低下し、SASが増加することが研究で明らかになっています。
主な症状
夜間の症状
| 症状 | メカニズム |
|---|---|
| 大きないびき | 狭くなった気道を空気が通過する際に組織が振動する |
| 呼吸の停止(無呼吸) | 気道が完全に閉塞して空気が流れなくなる |
| 頻繁な中途覚醒 | 低酸素状態になった脳が体を覚醒させて呼吸を再開する |
| 寝汗 | 無呼吸による血圧・心拍数の変動・交感神経の過活動 |
| 夜間頻尿 | 覚醒が多くなることで尿意を感じやすくなる |
日中の症状
| 症状 | 特徴 |
|---|---|
| 強い日中の眠気 | 会議・運転中でも眠くなる。居眠り事故リスクが通常の7倍とも |
| 起床時の頭痛 | 睡眠中の低酸素・高二酸化炭素状態による血管拡張 |
| 集中力・記憶力の低下 | 深い睡眠が取れないことで脳の回復が不十分になる |
| 気分の落ち込み・倦怠感 | 慢性的な睡眠不足による精神的影響 |
放置するとどうなるか|合併症リスク
SASで最も怖いのは合併症です。睡眠中の繰り返す低酸素状態が心臓・血管・脳に大きな負担をかけ続けます。
| 合併症 | リスク上昇 |
|---|---|
| 高血圧 | SAS患者の約50%が高血圧を合併 |
| 心筋梗塞・不整脈 | SASなしと比べてリスクが2〜3倍 |
| 脳卒中 | SASなしと比べてリスクが約1.5〜3倍 |
| 糖尿病・高脂血症 | 慢性炎症状態の継続により発症リスク上昇 |
| 突然死 | 無呼吸指数(AHI)が20回以上の患者は寿命が短い傾向 |
診断・検査の流れ
ステップ①:セルフチェック(エプワース眠気尺度)
8つの場面(座って読書中・テレビ視聴中・会議中・車の乗客など)でどの程度眠くなるかを0〜3点で評価します。合計11点以上で「日中の眠気が強い」と判断され、専門医への受診が推奨されます。
ステップ②:簡易検査(自宅で可能)
睡眠外来・呼吸器内科・耳鼻咽喉科で簡易診断装置を貸し出してもらい、自宅で一晩使用します。鼻と口の空気の流れ・胸腹部の呼吸運動・酸素飽和度などを測定し、無呼吸低呼吸指数(AHI)を算出します。
ステップ③:精密検査(入院・ポリソムノグラフィー)
AHIが20回以上、または自覚症状が強い場合は入院してポリソムノグラフィー(PSG)という精密検査を行います。脳波・眼球運動・筋電図・呼吸など多数の指標を同時測定し、睡眠の質を総合的に評価します。
治療法
①CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)
中等症以上(AHI20回以上)の閉塞型SASに最もよく使われる標準治療です。鼻マスクを装着して睡眠中に空気を送り続け、気道が塞がらないようにします。健康保険が適用されます(月1回の通院が条件)。使用後の日中の眠気・いびきの改善効果は高く、多くの患者が症状の劇的な改善を実感します。
②マウスピース(口腔内装置)
軽〜中等症に使われる治療法です。下顎を前方に固定するマウスピースを装着することで気道を広げます。歯科で作製します。CPAPより装着感が楽で旅行にも持ち運びやすいメリットがあります。
③外科的治療
扁桃肥大が原因の場合は扁桃摘出術が有効です。鼻中隔湾曲症など鼻の構造が原因の場合は鼻手術が行われることもあります。
④生活習慣の改善
肥満が原因の場合は体重を5〜10%減らすだけでAHIが大幅に改善するケースがあります。飲酒量の減少・就寝前のアルコールを控えることも有効です。
自分でできる対策5つ
| 対策 | 効果と理由 |
|---|---|
| 横向き寝にする | 舌根の落ち込みを防ぐ。抱き枕を使うと安定しやすい |
| 体重を落とす | 首周りの脂肪が減ることで気道が広がりやすくなる |
| 寝酒をやめる | アルコールが筋弛緩を引き起こすため就寝前3時間は禁酒 |
| 枕の高さを見直す | 頭が高すぎると気道が曲がり閉塞しやすくなる |
| 禁煙する | 喫煙は気道粘膜の炎症・腫脹を引き起こしSASを悪化させる |
受診すべき診療科
睡眠外来・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・循環器内科が対応しています。「睡眠外来」を設けているクリニックや大学病院を探すのが最も確実です。セルフチェックで11点以上だった方・パートナーから無呼吸を指摘された方は早めに受診することを強くおすすめします。
睡眠カウンセラーの総評
睡眠時無呼吸症候群は「いびきがうるさいだけ」という軽いイメージで放置されがちですが、心臓・脳・血管への影響は非常に深刻です。整体師として多くの患者と接してきた経験からも「慢性的な肩こり・頭痛・朝の疲れが取れない」という方の中にSASが隠れているケースを何度も見てきました。心当たりがある方はまずセルフチェックを行い、スコアが高ければ迷わず専門医を受診してください。

